古民家リフォーム 築150年の歴史ある家を快適に

  • 取材日 2011年11月01日
  • 家族構成 夫婦

ご主人の退職を機に、東京の家からご主人の生家に帰ることにされたN様ご夫妻。
しかし築150年という歴史ある建物は現代の暮らしには合わない点が多々あり、特に、寒さ対策・暗さの解消・動線の合理化の3点を解消したいとお考えでした。

プランニングの段階や建築中のサポート、スタッフに感じた印象

 

ご主人:(信州ハウジングに決めたのは)今井さんの人柄だな(笑)
今井(営業担当):いえいえ(笑)
植松(現場監督):顔は怖いですけどね(笑)
一同:(笑)

 

奥様:植松さんだって最初は怖い人でしたよ。現場では厳しいし。
植松:仲良しこよしで甘い顔はしていられませんよ。

厳しい顔になるのも無理はなく、工事の最初の山場がご夫妻の安全にも係る倒れ起こし(傾いた建物を直すこと)でした。

 

 

■リフォームという選択に対して■

ご主人:自分で建てた家だったら壊して建て直そう、というのもあるけど、ご先祖様から譲り受けたものだから。

外装は雰囲気を壊さぬよう、レトロなトーンで合わせた腰板と漆喰で仕上げ、ポーチも自然素材である鉄平石にして建物になじむようにしました。

 

植松:普通のリフォームは、新しく、新しく、という発想だけど、こういうお宅は逆で。
ご主人:残そう、残そう、だからね。

奥様もご主人のルーツを大切にし、建具や家具などを積極的に残すお考えだったので、方針は一致していました。

 

■バランス■

例えば元は養蚕のための仕掛付天井だった寝室。
その珍しい天井を残すかどうか、工事が始まってからも検討が続きました。

奥様:梁も、寒さを考えなければもっと出したかったです。

天井が高ければ熱は上に上がるので、ほどほどの高さで止めることに。

植松:壁や天井材を剥がすと面白い梁があったじゃないですか。あれを見えなくしてしまうのが惜しくて。
でもあまり古民家にこだわって「残し」過ぎると今度は快適さが行き渡らないし。

建物自体が広く高さもあり、さらに夏でも涼しいN様邸の立地を考えると冬の寒さ対策も重要でした。

植松:手立てが無いわけでは無いですが、かといってコストをかけすぎても良い仕事とは言えないし。美観と快適さのバランスを取りながらの工事でしたね。

実際に家に住んでみての感想

 

■工事を終えて■

植松:(職人が一人も来なくなって)寂しくなりますね(笑)
ご主人:そうよ、毎日居たようなものだから。
植松:現場は生き物だから直接関係無い工程でも、顔出して見ていないと、自分が仕事に入る時に状況がつかめないんですよ。

多い時には10人くらいの職人が同時に入っていたN様邸。

ご主人:職人のトラックもたくさん停まっているからご近所も気にしていてくれて、会合なんかに行くと「おい、今日は車が10台も停まってたな」なんて言われて(笑)
奥様:(完成して)気持ちが落ち着いてきた。家の中で一日8000歩位歩くんだけど、昔の家は歩くたびにガタガタ揺れていたから。
ご主人:振動でご本尊がだんだん(動いて)南向いて(笑)

 

住みながらのリフォームで、シートを挟んで生活空間と工事現場という期間も少なくなく、気苦労もあったご様子。
しかし直すべきところは妥協せず工事を完了した今、N様邸は美しさと快適さを兼ね備えよみがえりました・・・が。

ご主人:(話をしながら外を見て)あの木が邪魔だからそのうち切ろうか、なんて話をしているんですよ。

まだまだ手入れの楽しみは尽きないようです。

どのような家づくり、暮らし方ができると感じられたか

 

■自然豊かな中での暮らし■

ご主人:今日は皆さんお見えになるというから、昨日頑張って落ち葉を片付けたんだよ。
でも朝になったら元通り(笑)
奥様:あら、落ち葉だってきれいよ。

ご主人が枯葉を片付けられた甲斐もあり、アプローチに沿って伸びる落ち葉の帯は鮮やかな黄色と茜色。
こんな自然豊かな立地のN様邸には、留守の間に勝手に住み着いていた者が・・・。

ご主人:棟梁が天井裏へ行ったら山が4つもあって(笑)

山とはハクビシンのフンのこと。ハクビシンは決まったところでフンをする習性があるため天井が抜ける事も。

ご主人:「これはいい肥料になるぜ~」と言いながら、小松棟梁が下ろしてくれた(笑)

侵入口をふさぐまでは夜中に天井裏を走り回られたりと被害もあったようですが、肥料といえば。

奥様:流し前の窓を透明ガラスにしたらちょうど主人の畑がみえるんですよ。

型ガラスであることが多い流し前サッシをあえて透明にし、主人の畑仕事や広々とした風景を眺められるようにしたのですが。

 

奥様:外から結構中が見えるんですよ。特に夜なんかは。
植松:まあ、そんなに人も通らないところですから。
ご主人:人は通らないけど狸がね、近所の空き家に住んでいるらしくて、子供を連れて庭の方に来るんですよ。狸って立ち上がるんだね。後ろ足で立ち上がった狸の一家が手をつないで俺たちの方をじっと見ているのが可愛くて。

工夫・苦労された点や楽しかったエピソード

 

■職人との交流■

ご主人:ポプラ(キッチンカウンター)には、大工さんも苦労していたな。

流し台の背後に据えた作業カウンターの天板にはポプラの板を使ったのですが・・・

植松:広葉樹は(針葉樹と違い)削るのは大変ですよ。
ご主人:なるほど、大工さんは毎朝、現場に来るとカンナ研いで調整していたな。
奥様:でも、テーブルと似た雰囲気になるから(合うから)、とおっしゃって作ってくれましたよ。
ご主人:木を知らないと出来ないな。

奥様:小松棟梁は行き届いた人だった。
ご主人:気配り、目配り、物配りで本当に大した棟梁だった。あの人は管理職として最高だな。

一緒に入った大工と棟梁のやり取りも楽しいものだったようで、

ご主人:大工さん達の仲が良くて、楽しかった。小松棟梁と、叔父の大工さんと、米沢さん。あと手伝いに入った若い大工さん達も。

ただし、基本設計図を元に細部は毎日話し合いで工事を進めていたため、

植松:最初は完成イメージがわからなくて不安だったでしょう。
ご主人:(見学中)大工さん同士の話を聞いていても分からなかったな。
奥様:長さひとつとっても尺、センチ、ミリ、って単位がコロコロ変わるから。
ご主人:縦糸(下げ振り)と横糸(水糸)で測って、こうしたらいいんじゃないかとか。「おい、これでいいのかい」「それでいいのえ」って具合で。

午前中に畑仕事を済ませて、午後は大工の仕事を見るのが楽しみだった、とおっしゃるご主人。特に傷んだ梁を新たな材と入れ替える工程はご興味を引いたようで、自ら撮影された写真を提供して下さいました。

 

※以下、ご主人のショット

 

ご主人:最初は何が始まるのかと思ったよ。ああやって型をと取るんだな。
植松:めったに見られない技ですね。
ご主人:若い大工さんが一緒に見ていたら勉強になるよ。俺が勉強してもしょうがない(笑)
奥様:これから大工さんになれば(笑)

ご主人には元々職人気質なところがおありなのか、壁面の漆喰の一部を左官に教わって塗られた時には、

ご主人:(自分の家なんだから)そんなに根詰めてやらなくても、と左官さんに言われたけど、雑に仕上げて家を見に来た人に「師匠は誰だ」って聞かれたら困るでしょって言い返して(笑)

などというやりとりも。

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